
「MIXED HELL 2024」予習インタビュー第1弾!
自らを“V系モダンメタル”と呼び、“超多種多様なメタル系フェス”である「MIXED HELL 2024」に “V系”を背負って堂々登場するJILUKAが、自身の音楽的ルーツや今夏の欧州ツアー/欧州巨大メタル系フェス出演の成果、そして「MIXED HELL 2024」への意気込みまでを約1万5000字で語りまくる! JILUKA という存在を未だ知らない人にこそ是非、読んでほしい!
文◎後藤寛子
その時代に応じたモダンなメタルがやりたいなと思っていました(Sena)
――まず、「MIXED HELL 2024」のオファーが来て、ラインナップを見たときの印象はいかがでした?
Sena(G) 嬉しかったですね!
Boogie(Ba) 面白い顔ぶれで。多種多様な感じがするけど、一本芯はあるのかなという感じがしました。
Zyean(Ds) 最近のモダンなラウド系バンドが集められているので、そこに僕らも選んでもらえてよかったです。
Ricko(Vo) いや、やっとか!っていう感じですよ。
Sena そう。ちょっと遅かったくらい。
――(笑)。いわゆるメタル・シーンとの距離感についてはどうですか?
Sena 属しているのはどちらかというとヴィジュアル系なので、活動し始めたときはちょっとありましたけど。ただ、先輩方の活動のおかげもあって、今では全然ないです。特に、音楽的な部分ではまったくないと思います。
――「MIXED HELL 2024」でJILUKAを初めて観る方もいると思うので、JILUKAが一体どんなバンドなのかということをひもといていければと思います。結成したときから、ヴィジュアル系でメタルをやりたいというイメージがあったんですか?
Sena そうです。メタルと言ってもいろいろ形がありますけど、その時代に応じたモダンなメタルがやりたいなと思っていました。先輩にDELUHIというバンドがいたので、その影響も受けつつ。活動するなかで音楽性が変わっているように見えるかもしれないですが、どんなメタルをするかが変わっていっただけですね。
――ヴィジュアル系でメタルというと、耽美なメロディック・スピード・メタルとかシンフォニック系が主流なので、そことは少し違うアプーチな印象があります。
Sena それこそ最初のほうはメロスピ系でしたよ。デス寄りのイメージはなかった。
Ricko でも、シャウトやスクリームは最初から入ってました。バンドを始めたときから、Senaが僕のスクリームを気に入ってくれていて。
――Senaさんがメンバーを集めていったんですか?
Sena はい。メタルに抵抗がない人を集めようと思って。今は結構増えてきてますけど、結成当時(2015年頃)は、ヴィジュアル系のなかでメタルはかなり小数派だったんですよ。いたとしてもファッション・メタラーっていうか、「メタル好きなの?」って食いつくと「いや、なんとなく話を合わせてただけだった」みたいなことも多かったから、にわかじゃない人がよかったんですよね。逆に、あまりにもメタラーとしてのこだわりが強すぎると、ヴィジュアル系はちょっと……みたいなことも当時はあったし。なかなか難しかったんですけど、バイブスが合う人を探しました。実際に話してみて、自分と同じくらいのバイブスを持ってる人じゃないとダメだなっていう。
――当時はやっぱりメタル好きは小数派でしたか。
Sena そうでしたね。
Boogie やっぱり、どちらかというとノリやすくて聴きやすいキャッチーな音楽をやりたい人が多かったと思うので。全部が全部じゃないですけど、メタルってキャッチーに全振りではないじゃないですか。だから、わざわざキャッチーじゃないものをやろうという人はあんまりいなかったんですよね。
Ricko あと、ちょっと尖った目線で言うと、それほどの能力があるやつがいなかったです。その当時は。
Boogie カッコつけてるな~!(笑)
Ricko ははは! 今はいろいろすごいバンドがいっぱい出てきてるから、スキルがある人が多いんですけど。その当時はいなかったんですよ。
俺はもともと洋楽のパンクが好きで、SUM41とかZEBRAHEADとかを聴いてたんです(Ricko)
――たしかに演奏スキルは必要になりますもんね。では、みなさんのルーツとなっているバンドについて、メタル・サイドとヴィジュアル系サイドの両方を教えていただけますか?
Sena メタルだと、王道なところでCHILDREN OF BODOM、SLIPKNOTとか。ANGRAとかのメロスピ系も好きだったし、いろいろ聴いてましたね。ヴィジュアル系の入り口はX JAPANです。the GazettEとかNIGHTMAREあたりを経て、先輩に当たるDELUHI、D'espairsRayとか、洋楽のバイブスが入ってるバンドが好きでした。
――ギターを始めたときから、速弾きギタリストの道に?
Sena X JAPANから入ってたので、逆にそこしか練習してなかったです(笑)。当時はリフの素晴らしさや奥深さがあんまりわかっていなくて。ゲーム的に、弾いていて楽しいのが速弾きのほうだったんですよね。速弾きってインパクトがあるじゃないですか。だから、『ヤング・ギター』とかを見てずっと練習してました。
――Boogieさんは?
Boogie 聴き始めたのはメタルが先で。KORNとかSLIPKNOTから入って、当時は今ほどビッグ・ネームじゃなかったですけど、ICE NINE KILLSがすごく好きで聴いてました。今はかなりのビッグ・ネームなので、最初期から支えてるファンみたいな優越感をちょっと感じてます(笑)。そこから、友達に「ヴィジュアル系シーンでライヴやってみない?」って誘われて、ヴィジュアル系を聴き始めたんです。DIR EN GREY、the GazettE、Sadieとか、黒くて重い世界観に惹かれて、いろいろ掘っていきました。結局、メタルも黒くて重いものが好きなので、自分の中で一本筋が通ってるのかなと思います。
――Rickoさんは?
Ricko 俺はもともと洋楽のパンクが好きで、SUM41とかZEBRAHEADとかを聴いてたんです。そこからLINKIN PARKとかCHILDREN OF BODOMとか、メタルも含めて幅広く聴くようになっていきました。だから、ヴィジュアル系が入ってくるのは遅かったんですよね。俺も黒くて重いヴィジュアル系が好きで。lynch.、Sadie、DELUHIとかを聴いて、こういうバンドがやりたいなと思って今に至ります。
――最初はパンク少年だったんですね。
Ricko パンク少年です! その当時パンクで流行ってたから、金髪に赤メッシュみたいな髪型をしていて。自分はパンク・スタイルだと思ってたのに、ヴィジュアル系って言われてちょっとモメたりしてました。俺はパンクだ!って(笑)。
――のちにヴィジュアル系バンドのヴォーカルになるとは(笑)。シャウトするようになったのは?
Ricko バンドを始めたときはハイトーン・ヴォーカルで、SEX MACHINEGUNSのコピー・バンドとか、ジャパメタ系だったんですよ。そこからLINKIN PARKとかを聴き始めて、「カッコいいな、このシャウトどうやって出してるんだろう」って発声を勉強するようになって。どんどん聴く音楽ジャンル自体が激しい方向にいったんです。いろんなジャンルのいいところを盗んできた感じですね。
――Zyeanさんは?
Zyean 僕はヴィジュアル系が先で。ヴィジュアル系を好きになったきっかけのバンドはAlice Nineなんですけど、その頃は楽器に興味を持ってなくて。ドラムを始めるとなったときに最初に影響されたのはX JAPANですね。だから、最初からツーバス・スタイルでやり始めて、GALNERYUSとかDRAGONFORCEみたいなメロスピ路線、シンフォニックなRHAPSODY OF FIREとかSONATA ARCTICAを聴いていて。そのうちにデス・メタルというジャンルを知って、どんどんデス系にのめり込んでいきました。もう、テクニカルなことをやっていればやっているほどカッコいいみたいな価値観(笑)。
――そうなりますよね(笑)。
Zyean ヴィジュアル系で活動しつつも、自分のプレイの根底にはデス・メタルがあったので、ライヴでもそういうエッセンスをどうにか出そうとしてましたね。今でもテクニカル系は好きです。
やっぱり唯一無二な、代わりがきかないバンド(Boogie)
――みなさん色々なルーツを辿って今があるんですね。活動するなかで、「JILUKAはこういうバンドだ」というスタイルを掴んだタイミングはあったんですか。
Sena わかりやすいところでは2022年にリリースした「BLVCK」ですね。バンドとしては、その前に出したミニアルバムの『IDOLA』(2021年)で掴んではいました。
――具体的にはどういう感触があったんですか?
Sena エレクトロ×ゴシック×メタルでEGMというスタイルが固まったときですね。自分たちで言い出した言葉なんですけど、簡単に説明するとメタルとエレクトロとシンフォニックを混ぜた音楽性のことで。『IDOLA』をひっさげて活動していきながら、そういう自分たちのなかでテーマが見えたんです。
――メタルから何か派生ジャンルに寄っていくのではなく、全部の要素をがっつり盛り込むスタイル。
Sena はい。禁忌を犯しました。それまでは、メタルな曲と、そこにエレクトロをかけ合わせた曲、シンフォニックをかけ合わせた曲という、大きく分けて3つの軸があったんですよ。どれもJILUKAなので、自分たちをプロデュースするのに3つを紹介する必要があった。でも、誰しも最初の入り口はどれかひとつだし、その3つをクリアした人じゃないと真にJILUKAに没頭できないのは健全じゃないなと思って。「この1曲を聴いて好きなんだったらOK」と言える名刺みたいな曲がほしかったし、自分たちとしてもそう認識できるものがほしかったんですよね。だったら、全部合わせた曲を作ればいいんじゃないかということで、「BLVCK」が生まれたんです。この“EGM”を聴いて好きになってくれるんだったら、まだまだ素晴らしい曲がたくさんあるから他の作品を深掘りしていってください、きっと好きな曲があるよ、っていう。
――それこそ聴きやすさやキャッチーさを考えてセーブしたりせず、好きなものを全部入れてしまえっていう。
Sena 個人的には聴きやすさを置いてきたつもりはないんですけど、周りから見たらそうなっている感じかもしれない。常識にとらわれずというか、常識からは年々外れていってますね。
――Rickoさんも「BLVCK」ができたときの手応えは大きかったですか。
Ricko もちろん。その前の『IDOLA』から手応えはありましたけど、「BLVCK」は「来た!」と思いましたね。これ出して一発で売れるぞ!って。まあ、それは毎回思ってますけど(笑)。ただ、「BLVCK」から楽器のチューニングが下がったので、歌えるかなっていう心配はありましたね。
――重さが半端ないですよね。リズム隊としてはどうですか?
Boogie 「BLVCK」が完成するかしないかあたりの時期に、全員で「今後どうしていこうか」っていう話をしていたんですよ。そこで出た結論が、やっぱり唯一無二な、代わりがきかないバンド。全世界を見たら似たようなバンドはいるかもしれないですけど、少なくとも日本国内では代わりがきかない存在になりたいとなったときに、やるべきことややりたいことがどんどん明確になって、今の形に繋がった感じですね。
Zyean デモができあがって聴いたときに、自分たちがやりたかったことを全部集結させたような、本当に欲張りな曲だなと思いました。ドラムでも、それまでは変拍子だったり、それこそ演奏面でテクいことを見せつけて個性を出すっていうアプローチをしてきたんですけど、EGMになるとそもそもリズムの要素がいっぱいあって。ある程度ドラムを抑えたほうが映える部分も結構あるので、そういう意味でも意識が変わりました。
Sena とりあえずクリエイターとしては、後生の人々が苦しんでくれればいいなって(笑)。僕らも、メタルとエレクトロを掛け合わせた音楽の層を築いた人たちと、メタルとシンフォニックを掛け合わせた音楽の層を築いた人たちがいた上に、その合わせ技で禁忌を犯すことをやってきたので。この先、さらにEGMの禁忌を犯す人が出てくるのかと思うと大変だよって。苦しんでくれればいいなと思ってます。
Boogie 最高(笑)。
第一印象から入って、JILUKAの世界にいかに陶酔してもらうか(Zyean)
――EGMというかたちが固まって以降、「VENØM」などもそうですけど、極悪なブレイクダウンもJILUKAの武器になっていますよね。
Sena そうですね。自分たちで意識してブレイクダウンを取り入れ始めたのは活動開始1年経ったくらいからですけど、ブレイクダウンは結構肝として入れてると思います。もはやサビみたいなものですね。
――なるほど!
Sena 僕はもともとEDMやヒップホップが好きなんですけど、EDMのドロップみたいなものなので、ビート面でのサビなんですよ。メロディ面ではまた解釈が違いますけど。
――確かに一番気持ちいいところですよね。バンドのグルーヴや一体感が試されるパートでもあると思いますが。
Ricko そこはもうばっちりですから。
Boogie ばっちりです。演奏面で言うと今の曲のほうが難しそうだよねってよく言われるんですけど、意外と昔の曲のほうが難しくて。特にブレイクダウンは、年々わかりやすくなってると思う。
――今年6月にリリースされた最新曲「S4VAGE」は、EGMの各要素がさらに濃密な1曲になっていますね。
Sena そうですね。EGM以降の曲の中でもかなり自信があります。作っていた当初よりも、ふとメンバーが聴いてるのが聞こえてきたときに「おっ、カッコいいな」って自分で思うことがありますね。世界観としても、世紀末感というか、映画を観ているようなカッコよさが出せたかなって。
――ミュージックビデオもド派手ですし、現実離れした世界観を構築しているような印象があります。
Sena 最近、トータルでの世界観をかなり意識するようになったと思います。そういう部分でメンバー全員の意識が以前より過敏になっていて、言ってしまえば、曲すらもひとつのピースにすぎないというか。
――ヴィジュアルもパフォーマンスも、醸し出す空気すべてでJILUKAの世界という。
Sena そうしていきたいと思ってます。
Ricko EGM以降、ヴォーカリスト的には結構苦しい曲が多いのでライヴは大変なんですけど。そこはなるべく見せず、王者っぽい感じを演出してます(笑)。
――やっぱりヴィジュアル系の美学として、美しくカッコよくありたいと。
Ricko そうですね。やっぱりメンバーそれぞれのヴィジュアルがいいし、能力も高くて、世界観が作れているので。楽曲もしかり、すべての面で他のバンドにはないと自負してます。俺がJILUKAじゃなくて他のバンドのメンバーだったら、JILUKAとは絶対対バンしたくないっすね! カッコよすぎて怖いです。
Zyean 見せ方に関しては、以前よりすごく意識するようになっていますね。さっきSenaが言っていたように、第一印象から入って、JILUKAの世界にいかに陶酔してもらうか。それこそライヴのパフォーマンス面でも、それぞれのキャラや立ち位置があるので、その上で自分はどう見せたらいいんだろうって考えるようになりました。
――そこはJILUKAの大きな強みですよね。ステージを見ていると、真ん中にRickoさんとZyeanさんがいて、両サイドのBoogieさんとSenaさんが対になっている感じがあって。黒系とピンクのコントラストが……。
Boogie 黒と白じゃなくてピンク担当なんだ(笑)。
Sena 日本ではピンクってあんまりいいイメージがなくない?
Boogie まあ、ピンクだよね(笑)。自分の意識としては、JILUKAという作品の登場人物であるという感覚があります。楽曲はそのBGM……といったらおかしいですけど、楽曲も衣装もステージもパフォーマンスも、すべてJILUKAを作ってるもののひとつという意識でやっているので。JILUKAのメンバーである自分がモブキャラになるわけにはいかないし、同じ作品に同じ格好のキャラは出てこないじゃないですか。そういう意味で個性は意識してますね。でも、そもそもの好みがそれぞれ違うから、お互いにやりたいことを追究したうえで色が違うんだと思います。
――本当にひとりひとりのキャラが立っていて。なかでも、やはりSenaさんの衣装はインパクトが強いですけど。
Boogie Senaだけ、ちょっと予算の都合で布が少なくて(笑)。
Sena 衣装というか皮膚(笑)。皮膚という衣装。
――ははは! 歴代のヴィジュアル系バンドを鑑みても、露出の方向は意外と少数派ですよね。
Ricko 太ももを出すくらいの人は多いですけどね。
――そうそう。
Sena 露出の歴史……たとえばLUNA SEAのSUGIZOさんとか、そういう方々の中での最先端という意識ではいますけどね。だんだん布の量が減ってるってよく言われるんですけど、フェーズの違いはあれど、布の量はだいたい一緒なんですよ。
Ricko 最先端でありながら最終形ですよね。これ以上出せないっすもんね。
Sena 出す量としてはそうかもしれないけど(笑)。でも、出す量だけで言ったらもっとすごい人たちもいるので。そこにはやっぱり美学があるんですよ。品がないものはちょっと苦手なんですよね。
こういうエンタメやバンドって、やっぱりインパクトやパンチをどこで残すかじゃないですか(Sena)
――衣装はどういうふうに考えているんですか?
Sena 衣装を決めるチームがあって。三権分立みたいになっていて、それぞれがお互いを監視し合うみたいなミーティングをしてます。ざっくり「露出の仕方が下品になってないか」とか「美学に反してないか」みたいなガイドライン的なものがあるんですよ。そのガイドラインを軸に3人で見張り合ってて、「ちょっとそれやりすぎじゃないですか?」「いや、そう言うけど……」みたいに話し合って決めています。
――すごいシステム(笑)。自分ひとりで決めてるんじゃないんですね。
Sena もちろんもちろん。
――衣装のインパクトが入り口のひとつになっていると思いますし、よく対バン相手のバンドにもイジられてますよね。
Sena 今年7月のMUCCとの対バンでは、MUCCのMCの話題の8割が僕でしたね……。僕の話でそんなに時間を取っていいのかなと思ってました。
Ricko キャッチーだねえ。
Sena 僕が置いていったキャッチーさをここで回収してます。
――なるほど(笑)。
Sena 何はともあれ、こういうエンタメやバンドって、やっぱりインパクトやパンチをどこで残すかじゃないですか。それこそX Japanもヴィジュアル的なインパクトが強いし、音楽だけではあの世界は成り立たなかったと思うんですよね。そこがヴィジュアル系の強みであり、素晴らしさでもあると思います。
――そうですよね。最近は出演イベントや対バンの幅が広がるなかで、ヴィジュアル系の個性や美学を持ったまま殴り込んでいるところが素敵だなと思います。7月にはCrossfaithとの対バンがありましたが、いかがでしたか?
Sena 楽しかったですね! 僕らとしてはもともとCrossfaithが好きだったのもあるんですけど、僕らがリスペクトしてるのはもちろん、逆にCrossfaith側からのリスペクトもすごく感じられて。音楽的にも、人間的にも……ステージがそのままバックステージの雰囲気に表れていて、本当に素敵な先輩だなと思いました。
――オーディエンス的にも盛り上がってましたか?
Ricko 逆にこっちがびっくりするくらい盛り上がってました。JILUKAファンもそうなんですけど、Crossfaith側のお客さんがすごく温かくて、JILUKAを受け入れてくれてるのを感じました。
Sena めちゃくちゃいいイベントだったよね。
――楽曲的には、それこそエレクトロとメタルを掛け合わせる分野の先輩ですからね。
Sena そうですね。Crossfaithのスタッフさんにも、ゲスト・バンドを発表したときの反響が、全バンドのなかでも1,2を争うくらい大きかったって言われました。実際、すぐにソールドアウトしましたし、いろいろな部分で相性がよかったと思います。音楽的にもそうですけど、僕らも楽屋がめちゃくちゃ騒がしいって言われるバンドで。
――そうなんですか。
Sena ヴィジュアル系のなかではめちゃくちゃうるさいらしいです。イエーガーとかテキーラ飲んでるわけじゃないですけど(笑)、パーティーな感じは大好きなので。
――今、カテゴライズできないバンドが増えているし、どんどん混じっていけばいいですよね。
Sena そうですね。界隈でカリスマとされる存在であればあるほど、ジャンルに関してはボーダレスな人が多い印象があります。
海外の大きい規模のフェスに出るのは、自分の音楽人生における目標のひとつだった(Zyean)
――もうひとつのトピックとして、今年初の海外ツアーが開催されました。6月にヨーロッパとロサンゼルスを回るツアー「K4RMA」があり、スペインの「Resurrection Fest 2024」とポルトガルの「EVIL LIVE FESTIVAL」にも初出演を果たしましたが、海外公演はいかがでしたか。
Ricko 海外はすごかったですね。長い間待っていてくれたから、その喜びが声援やノリに出ていて。日本で他ジャンルのイベントに出るときのウェルカム感とはまた違って、圧倒されました。フェスも結構お客さんが入ってくれてびっくりしましたね。大きなステージでの見せ方の勉強にもなりました。
Sena 海外の人たちは日本よりもリアクションがわかりやすくて、いいものはいい、ダメなものはダメっていうカルチャーなのかなという印象でしたね。「Resurrection Fest」も、僕がSNSで発信した映像は後半にやった曲の切り抜きなんですよ。最初のほうはもうちょっと少なかったんですけど、僕らのステージが始まってから、音を聴いて「今やってるJILUKAっていうバンドすげえじゃん」みたいな感じでどんどん集まって、最終的にうしろまでパンパンになったんです。自分たちが、いい意味で日本でのライヴと変わらない気合の入れ方で、全力でJILUKAというものを提示した結果そうなった。横から観てる人もいたし、最終的にJILUKAコールが起こったときはめちゃくちゃうれしかったですね。
Boogie 泣きそうになったね。
――だんだん増えていくっていちばん手応えがありますよね。
Sena そうですね。あとから映像を見返したら、セッティングしてるときやライヴが始まってすぐはちらほら地面が見えてたんですけど、最後のほうは本当に人の海みたいになってましたから。もちろん最初からJILUKA目当てで来て、待ってくれている人も多かったし。だから、フェスで「JILUKAって何?」って様子見から入る雰囲気も、ワンマンライヴでの盛り上がりも両方体験できて、アーティストとしても、人間としても、すごくいい経験を詰めました。
Boogie ワンマン・ツアーに関しては、自分たちのファンが来てくれるわけじゃないですか。だから、Rickoが言ったとおり待ってくれていた感じが大きくて、声援もすごいし、フロアもぐちゃぐちゃになって盛り上がってましたね。資料用に固定カメラで映像を撮っていたんですけど、観客の声が大きすぎてバンドの音をかき消すから、資料にならなかったくらい(笑)。
Zyean ライヴ中、自分たちの音をイヤモニでモニタリングしてるんですけど、オーディエンスの声がイヤモニを貫いてめちゃくちゃ聞こえるんですよ。そのパワーは本当にすごかったです。
Boogie あと、フェスに関してはSenaが、まだフェスに出たり海外に行けるようになる前から、その規模を想定して曲を作ってくれていたのが生きたなと思いました。作っている当時はフェスの話なんてなかったので、「いつか出れたらいいよね」くらいの感じで話していたんですけど、いざ実現したら、ちゃんと曲が通用したんですよね。Senaが明確に未来のビジョンを見据えていて、そこを意識した楽曲があったからこそ、ステージに映えたのかなと思います。もっと狭い視野というか……目先だけのキャパを意識したステージ作りや楽曲作りで進めていたら、海外フェスでどんどんお客さんが集まることはなかったと思う。
――確かに。現時点で持っている武器を持って行ったら、海外でも通用したということですもんね。
Boogie そうです。海外が決まってから作ったというわけじゃなくて、そもそもそういう意識でずっと作ってたから。
Zyean 海外の大きい規模のフェスに出るのは、僕も自分の音楽人生における目標のひとつだったので。ついにそれを達成できたのはうれしかったですね。
SNSで流れてきたお客さんの反応でおもしろかったのは、「どうして『ファイナルファンタジー』のカッコしてるの?』とか(笑)(Boogie)
――世界に出たいという気持ちはもともと大きかったんですか。
Sena そうですね。でも、ちょうど海外を本格的に意識しようというモードになった頃に、コロナ禍に入っちゃったんですよ。それで、いろいろ決まっていた話が一度なくなってしまったりして。
――そういうバンドは多かったですよね。巡り巡ってようやく実現したと。
Sena ある意味では、コロナ禍で時期が延ばされてよかったのかなと思います。その期間にセルフ・タイトルであるEGMを確立させることができて、それを持って海外に行けたのはプラスになっていると思うので。
――ちなみに、海外ではヴィジュアル系のメイクをしているバンドってどういう目で見られるんですか?
Boogie 「Resurrection Fest」のあと、SNSで流れてきたお客さんの反応でおもしろかったのは、「どうして『ファイナルファンタジー』のカッコしてるの?』とか(笑)。
――ははは!
Ricko JILUKAの写真の隣に、ゲームの『キングダム ハーツ』や『ファイナルファンタジー』のキャラクターの写真を載せてる人とかね。衣装をジーっと見てるお客さんもいたし、ヴィジュアル系を知らない人からしたら、不思議なバンドがいる感じだったのかなと思います。
Boogie やっぱり見た目がキャッチーだから、そういう投稿がされたのかなって。あと、現地の日本の人が「ヴィジュアル系みたいなバンドがいると思ったらヴィジュアル系だった」って書いていたりして。「まさか今のヴィジュアル系バンドが海外の大きなフェスに出ているわけない」みたいなところがあったとしたら、そういう認識も覆せたのかなと思います。
――海外で活動するときはラフな衣装にするパターンもありますけど、JILUKAはそのままですもんね。
Boogie 僕らの意識としては、ヴィジュアル系だからメイクして衣装を着ているというよりは、JILUKAの世界観を作るためのようなアイテムのひとつだと思ってるので。海外でももちろんそのままです。
Ricko ちゃんと衣装もこだわって、統一感を持ってJILUKAとしての世界を作ってますから。それも含めて海外のお客さんに刺せた感じがしますね。
――ゴスメイクをしたり、コンセプトのあるメタルバンドはいろいろいますけど、やっぱり海外では男らしいバンドが多いじゃないですか。だからこそ、中性的なメイクが二次元的で新鮮だったのかもしれないですね。Senaさんは完全に女の子に見えていたのでは……?
Sena そうですね、一生間違えられてました。
Boogie ははは!「Resurrection Fest」に前日入りしてライヴを見ていたら、その日に出ていた花冷え。とかBABYMETALのメンバーか?みたいな目で見られてましたね(笑)。海外の人から見ると、幼くも見えるみたいで。
Sena まあ、それがインパクトとかギャップになればいいかなと。ヴィジュアル系と言われていないだけで、MOTIONLESS IN WHITEのようにゴシックな世界観を持ち合わせているバンドもいるし、メイクや衣装は自分たちの解釈次第なので。自分たちが受け入れられるのか?みたいな不安は不思議と最初からなかったですね。もちろん先輩方の前例もありますし。
Boogie そうだね。不安は全然なかったです。
――メイクや衣装も含めて作り上げてきた世界があるから、そのあたりを甘くしてしまうとJILUKAではなくなってしまうという。
Sena そうそう。逆にそこはめちゃくちゃ意識しますね。シビアな言い方をすれば、スペシャルな存在でいないとお客さんにとって価値がないので。でも、エンターテインメントって全部そうじゃないですか。スペシャルな存在だから価値がある。
――非日常を演出するという方向性はむしろ高まっていますよね。BRING ME THE HORIZONが来日したときのライヴも、本当にシネマティックで、舞台演劇のような演出になっていて。
Sena そうですよね。それこそBRING ME THE HORIZON は、「Resurrection Fest」で僕らの前日に同じステージに出ていて。「明日ここでやるのか」と思いながら観に行って……オーディエンスの数では負けてないと思うんですけどね、炎の数は負けましたね! ケタが違いましたよ、うちらゼロだったから。
Ricko ははは! 炎とヴィジョンの映像ね。本当にすごかった。
――海外は炎の演出がすごいですよね。じゃあ、JILUKAがこの先目指すところは、そういう演出込みのド派手のステージに立つことですか。
Sena そうですね。BRING ME THE HORIZONのライヴのおかげで、わかりやすく次の目標が見えて、逆にうれしかったです。
Ricko 次は炎を打てるように頑張ります!
――フェス自体の雰囲気から勉強になることも多かったですか。
Sena かなり多かったですね。「Resurrection Fest」の翌日がポルトガルの「EVIL LIVE FESTIVAL」だったんですけど、そこは大きいアリーナみたいな会場で。ほかのバンドのライヴも観に行ったんですけど、同じステージでやってるからこそ、自分たちとの違いもわかったし、すごく勉強になりました。
イベント名に「HELL」という言葉を使うからには、そりゃJILUKAを呼ばないと成り立たないでしょうと思っていますので
――それを体験すると、日本の規模感に対して思うところもありました?
Boogie 日本サゲ感はまったくないですけどね。日本と海外では、打ち出しているものや求められているものがやっぱりちょっと違うなと思って。海外にあって日本にないいい部分もあれば、日本にあって海外にないいい部分もあると感じました。今、その両方を吸収できているので、その両方を出していけたらいいなと思います。
Ricko そうしたらもっと楽しくなると思う。
――日本での活動としては、今後どういうビジョンを描いているんですか。
Boogie やっぱり、日本でも大きいフェスに呼ばれたいですね。炎天下の野外のステージに、堂々ヴィジュアル系として出たい。
Ricko で、火を使いたい!
Sena 炎に取り憑かれてる(笑)。
――(笑)。アウェイなステージも楽しめるタイプですか?
Sena そうですね。最近は、さすがに活動当初のような「誰も自分たちのことを知らなそう」っていうライヴはなくなってきたけど、規模が上がるごとに「この規模なのにこのリアクション?」っていうときはあるので、比率の問題ですよね。周りから見たらそんなにアウェイじゃなく見えても、自分たちの中では「今日のライヴは新しく見た人や興味ない人が多かっただろうな」と思うことはまだまだあります。そういうライヴは燃えますよね。
――まだまだ刺せるところがあると。
Sena 日本だけで言っても全然あると思います。今後は、海外で活動していることが日本のファンにとって付加価値になっていくと思うので。海外でも通用するバンドを今見れてるっていうスペシャルを提供していきたい。その付加価値をもっと磨いていきたい。「MIXED HELL 2024」もその一歩だと思うんですよ。このラインナップにJILUKAが入ることで、イベントに付加価値を提供できてるといいなって。そういう自信もあるので、今後もそういう活動をしていきたいです。
Ricko だから、『ヘドバン』に載ってる方々にどんどんライヴに誘っていただきたいですね。
Sena そうそう。(『ヘドバン』Vol.40の表紙を見ながら)目指すはFOX_FESですよね。僕ら、いつでもスーパーアリーナで勝負できますから!
――さらに、どんどん新しい情報が解禁されていまして。来年、スウェーデンのポスト・ハードコア・バンドIMMINENCEの北米ツアー22公演に帯同することが発表されました。ロングツアーに帯同するのは初めてですよね。
Ricko そうですね。日本でもないし、海外でも初めてです。長いうえに、5日連続ライヴみたいな日程もあったりするので、ここでボーカリストの腕が見せられるなって。それがもう楽しみでならないですね。
Sena 僕も楽しみです。まだ想像がつかなくて、どういう感じになるんだろうなって……僕ら楽屋うるさいけど大丈夫かなっていう心配がありますけど。
――ははは。ヴィジュアル系はどうしても準備に時間がかかりがちと言われますが?
Ricko 僕ら、準備はめっちゃ早いですよ。メイクも自分たちですることもあるし、過酷な環境には慣れてますから、大丈夫です!
Sena いやあ、僕は結構温室育ちなんで……。
Zyean ははは!
――そして、2月にはウクライナのプログレッシヴ・メタルコア・バンド JINJERの来日ツアーのサポートアクトを務めると。
Sena はい。日本で今誰が旬なのかというなかで名前が上がることは単純に嬉しいし、誇りに感じます。
Zyean 自分が好きで聴いてた海外のバンドと一緒に回れるのは本当にうれしいですね。海外のバンド目当てで来てくれるお客さんに対しては、もちろんアウェイだとは思うんですけど、不安は全然ない。むしろ当たり前にカッコいいから、早く観てくれ!って思ってます。
Boogie たしかにアウェイ感はあると思いますけど、ウェルカムなところでやり続けていても広がらないですし。だからこそ、こういうチャンスがあるのはすごくうれしいですね。これをきっかけに僕らのワンマンに来てくれたらさらにうれしいし、次に繋がっていくといいなと思います。2月8日に大阪でのワンマンがあって、JINJERのサポートを挟んで、2月23日に東京でのワンマンがあり、新曲も出る予定なので。いい連鎖になれば。
――どんどん展開していきますね。新曲は、またイカツい曲が生まれそうですか。
Sena ……頑張ります!
――楽しみです。最後に、改めて「MIXED HELL 2024」への意気込みを聞かせていただきたいと思います。ちなみに、今回のラインナップで気になっているバンドはありますか?
Sena 花冷え。とは、2年前くらいにイベントで一緒になってるんですよね。そのときはClub Asiaでしたけど、その2バンドが今年「Resurrection Fest」に出てたっていう。当時から華があるバンドだなあと思ってたんですけど、2年前からお互いにかなり変化していると思うし、また共演できるのが楽しみです。
――では、おひとりずつ意気込みをどうぞ。
Ricko もう「絶対楽しませる」しかないです。と言いつつ、結局自分が一番楽しんでると思いますけど。JILUKAの世界観を、自分たちを知らない人に刺せるのを楽しみにしています。最初はちょっとアウェイかもしれませんけど……でも大丈夫です、2曲目以降はブッ刺していきますので。よろしくお願いします!
Boogie 普段あまり交わることのないバンドと、交わることのないファン層というところで、本当にタイトルどおりミックスされたらいいなと思います。「分離HELL」じゃ、ちょっと悲しいじゃないですか(笑)。僕らが、よりごちゃごちゃにするので、それを存分に楽しみにしていてほしいです。
Zyean ラインナップに同じようなバンドがいないなかで、うちらも個性的なバンドのひとつとしてやれる自信は間違いなくあるので。他のバンド目当てで観に来た人たちに、新しい可能性を提供できたらいいなと思います。
Sena イベント名に「HELL」という言葉を使うからには、そりゃJILUKAを呼ばないと成り立たないでしょうと思っていますので。そもそもかなり多種多様なイベントだと思いますが、そのレベルをさらにワンランクもツーランクもあげて、イベントに華を添えられるステージにします!
Ricko めちゃくちゃにしてやる!って書いておいてください(笑)。
Sena 出禁になるくらいかまします(笑)。「MIXED HELL 2025」があってもJILUKAは観られないと思うので、絶対に今回観に来てください!